特集1:今の「時事」がわかる。



特集2:「人」が伝える今。
日本茶の真(まこと) | 土井氏



特集3:「写真」が伝える今。



日本茶の真(まこと)

「アウターネットワーク」の植村さんからご紹介の“日本茶インストラクター”として、また“山本勘助案内所”という多面的なご活躍をされている土井さんに、お話をうかがいました。

緑茶のソムリエ


土井さんの写真
富士宮駅から西へ、小高い丘を登っていくと緑色の茶畑が広がった。富士宮市の「山本」という地名に、ここ「茶処 やまいち園」はある。道沿いには店舗があり、裏手には工場と自宅が見えるが、お店の脇から入ったところに紅の日傘が立つ休息スペースが設えてある。「ここは、ただお茶を買いに来て帰るのではなく、一服できる場所としてつくりました」そう言いながら、スーツを身につけ凛とした土井さんに迎え入れられた。


休憩スペースの写真
“一服する”とは、急いで出かけずに一息つくことで、心の準備する時間をとるという意味合いもあるそうだ。現代は何かとせっかちになりがちで、心の余裕をなくして事故や犯罪、ストレス社会などにつながっているのではないかと言う。

「日本茶はりっぱな日本文化のひとつです。和の心もそうですが、日本茶自体が健康をもたらす効能も科学的に明らかになっている」という土井さんは、「日本茶インストラクター」という資格を有し、地元の小中学校での講演や地元放送局などでの出演により、日本茶の正しい知識の普及に精力的に活動をしている。そんな彼を人は「緑茶のソムリエ」と現代風にアレンジして呼ぶ。

日本茶を知る

身近な日本茶、私たちはどれだけ知っているだろうか。そもそもお茶とは、日本茶とは何なのであろうか。


目を輝かせお茶の説明をする土井さん
「お茶」はアジアを発祥の地として、論争はあるものの、中国雲南省のシーサンバンナ族が起源というのが有力である。「その頃、お茶の木とは知らなかった木のたもとで、お湯を沸かしていて葉が落ちた。煮出したお湯(茶)を飲んで快楽を得たことに、起源を発したと言われています。その後、お茶は奴隷と交換されるまでに価値のあるものだった時期もある」と言う。

お茶の栽培はどこでも出来るわけではない。「年平均気温は14℃以上、年間降雨量は1400ミリ以上、弱酸性(ph4〜5)土壌の亜熱帯地方で北緯45度以南、南緯45度以北、つまり日本では茨城県の北限あたりまでがお茶の栽培に適している」と説明する土井さんは、富士山の麓の肥沃な大地と気候や降雨量が「静岡茶」というブランドを育んだのではないかと考えている。

いま、スーパーには、日本緑茶、中国緑茶、烏龍茶、紅茶などが所狭しと並んでいる。「それぞれの栽培地の違いではなく、製造工程の違いがお茶の種類となっています」と言うように、日本茶は摘み取った葉をまず蒸して発酵を止め、揉み、乾燥させるのに対して、中国茶は釜で炒りながら揉んで発酵を止め乾燥させる。烏龍茶は摘んだ葉をまず揉んで、発酵を半分くらいで止め乾燥させる。紅茶も同様に先に揉むが、完全に発酵を止めてから乾燥させる。この製造過程は、お茶の成分を変え、その結果、効能と効果に違いがでる。

ここで、共に微生物によりおこる「発酵」と「腐敗」の違いについて触れたい。最大の違いは体に良いか悪いかである。酒や味噌、納豆、ヨーグルトなどの代表的な発酵食品はアミノ酸をだす。逆にO-157などの食中毒は毒素によりおこる。アミノ酸が多いと、いわゆる“旨み”“甘み”となり体にはリラックス効果があるそうだ。

日本茶に含まれる成分はカフェイン(含有量:3%)、アミノ酸(2%)、カテキン(14%)、ビタミンC、クロロフィルなどで、含有量の多いカテキンは“苦味”、“渋味”をもつが抗癌作用や殺菌効果がある。寿司屋の“あがり”と言えばお茶だが、今ほど衛生的でなかった昔に、生ものを食べた後にお茶を飲むことが理解できる。

日本茶インストラクター協会では、旨み、甘味が多く後からほんのり渋味、苦味のあるお茶が美味しいお茶と考えています」と話す土井さんは「紅茶をはじめとして烏龍茶などは香りを楽しむのに対し、日本茶は味を楽しむのです」と加えた。健康的な面からも日本茶は優れ、花粉症やアレルギーなどにも効果があるという(花粉症が治るわけではない)。

最後に、「一番おいしいお茶はありますか?」と質問をしてみた。「お茶の産地と銘柄は多岐にわたるので、お好みの一品を探してみて下さい。ただ一番茶が一番美味しいでしょう」つまり4月終わりから5月はじめ頃に摘まれた“新茶”が一番だという。「ニ番茶は一番茶のあとにできた葉、施肥はしますが養分を吸い上げられた土地にできる葉なので、一番茶の養分、特にアミノ酸の含有量がもっとも高いし、美味しい」という訳だ。

食と体

日本茶を通じて、発酵や成分などへの関心を強く持ち、最近では“食”への危機感を感じているという。スーパーなどに並ぶ食品は、保存料としてソルビン酸などが使用されているが、その抗菌作用は人体でも影響するのではないかと考えている。「殺菌は必要だが、過剰なまでの殺菌は人体の抵抗力を奪い、結果、花粉症やアトピーなどにつながっているのではないか」現代の消費とコストを重視した食品業界の、過剰なまでの“衛生的”な商品は、現代に増えるアレルギーなどを起している可能性がある。これは消費者である私たちにも責任があり、考え方を変える転換期にあるのかも知れない。


お茶の写真
土井さんのつくるお茶は、鰹節や昆布、米などを発酵させた天然アミノ酸を多く含んだ肥料で栽培している。「時間的にもコスト的にも掛かってしまいますが、体がおいしいと思ってくれるお茶こそ“おいしさ”の原点であり、茶農家として当たり前のことです」というシンプルな生産者としての姿勢は“食と体”の関係にこそ原点があり、何のために人は食べて飲んで栄養を摂取するのかという答えを導き出している。

もてなす心も忘れずに

土井さんが日本茶インストラクターになり日本茶の正しい知識や茶文化の推進、発酵や食の研究も、全てはお茶を飲んでいただく方のためにある。また、訪れてくれるこの“地域”も活動の場としている。


茶畑と富士山の写真
すっかり富士宮の春の風物詩となった「たかはらお茶街道まつり」も、土井さんが創始者となり周辺のお茶屋さんと連携して今年で5回目を数える勢いだ。また、去年は勘助ブーム(NHKドラマ『風林火山』の主人公:山本勘助の生誕地がこの山本地区であると描かれていることから盛り上がった。)で観光との相乗効果がみえ、徐々に定着化しつつある。「実は山本勘助の末裔になるのでは」と言う土井さんは、「山本勘助案内所」の看板も掲げ、散策途中の人が困らないようにとトイレを新設した。「たかはらお茶街道まつり」では各茶園でさまざまな特色をだしてスタンプラリーを行なっているのですが、それに勘助が一役買っているという。確かに、一度、話しはじめた土井さんの「勘助ばなし」は地元のあらゆる文献を調べあげただけあって、深い。その他にも、お茶摘みや手揉み体験、新茶の試飲会などもあって、日本茶を満喫できるまつりだ。そして、うかがった際は是非、話好きの土井さんとお茶をすすりながら、談笑の一時を過ごすのもお勧めである。

人を考え、お茶を科学する。無理が祟って偽装問題などが噴出する現代社会にあって今一度、日本文化に触れ、その心を味わって感じるという機会を、土井さんはお茶を通じて伝えている。帰りがけに見えた茶畑の向こうにそびえる富士山は、土井さんの懐のように広く澄んでいた。

イベント情報

第五回 たかはらお茶街道まつり
日時:2008年4月27日(日)10:00〜 予定
連絡先:0544-27-1059(やまいち園)
新緑が目にしみる季節に、楽しく健康的にウォーキングをしながら10店舗からなる茶園をまわってみませんか。
各店舗で、趣向を凝らしたイベントがお楽しみいただけます。参加各店舗とも心より皆様のご来場をお待ちしております。

Information

土井 治さんのプロフィール
NPO法人 日本茶インストラクター(認定番号04-0906)
静岡県O-CHA未来大学学士(称号番号 第238号)
「たかはらお茶街道まつり」実行委員長

茶処 やまいち園
住所:静岡県富士宮市山本800
電話:0544-27-1059
営業:年中無休



駿東北部地域交通円滑化委員会

事務局:国土交通省 中部地方整備局 沼津河川国道事務所 調査第二課